心臓ドックのご案内

心臓病はがんについで日本人の死亡原因の第2位となっています。
その多くを占めるのは心筋梗塞による突然死や心不全の悪化による死亡です。

心筋梗塞に代表される冠動脈疾患について

心臓の筋肉を栄養するための血管である冠動脈が動脈硬化で徐々に細くつまってくる病気は“狭心症”と呼ばれ、その多くは体を動かしたときに胸の痛み,圧迫感,息切れなどを生じます。一方、血栓などで突然に冠動脈が閉塞してしまう病気が心筋梗塞です。徐々に冠動脈が狭窄する狭心症と違い、心筋梗塞は突然血管が詰まるので事前に症状がないのに初めての発作で生命を落とすこともあります。突然死の半数以上は心筋梗塞が原因であり、働き盛りのうちに突然死に至ることもまれではありません。

心不全について

心不全とはなんらかの心臓の病気のために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり生命を縮める病気です。心不全の患者さんは年々増加し続け社会問題ともなっていますが、徐々に進行する病気であり高齢になってから闘病生活を余儀なくされたり、治療について難しい選択を迫られることが多くあります。
心不全はすべての心臓の病気の終末像であり生命を縮める重大な病気ですが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病も心不全の大きな要因であり日本人の2人に1人は心不全の危険因子をもつ予備軍と言われ、早い段階から予防や治療を行うことの重要性が叫ばれています。

特に心臓ドックをお勧めする方

当院の心臓ドックで行う検査

最近の研究で造影剤を使わないCTスキャンで測定する“冠動脈石灰化スコア”が従来の検査では難しかった将来の心筋梗塞などによる死亡リスクを予測できることがわかってきました。さらに最新の研究では“心臓脂肪”と心臓病の関連も報告されてきています。
そこで当院の心臓ドックでは従来からある心臓超音波検査、心電図、血液検査などにくわえて造影剤を使用しないCTスキャンで“冠動脈石灰化スコア”や“心臓脂肪”を測定することで安全に心臓病を診断すること、もしくは今後の心筋梗塞・心不全のリスクを評価することに重きをおいています。

“冠動脈石灰化スコア”とは?

“冠動脈石灰化スコア”とは、書いて字のごとく“冠動脈”の“石灰化”をスコア(数値)で表したものです。
冠動脈に動脈硬化が起こるとカルシウムが血管壁に沈着しいわゆる“石灰化”を起こします。カルシウムは骨の主成分ですから血管が文字通り“硬く”なるわけです。硬くなるだけなら血液の流れに問題はありませんが同時に粥腫(プラーク)と呼ばれるコレステロールや脂肪細胞、炎症細胞からなる“カス”の様な成分が血管の内側に付着すると狭心症や心筋梗塞を起こしやすくなります。石灰化の総量はプラークの総量と比例するため、石灰化の量を測定することで冠動脈の病気のなりやすさが予測できます。
(プラークが悪いなら直接プラークの量を計測すればいいのでは?と疑問に思ったかたもいらっしゃると思います。プラークのCT値(CT画像での色の度合い)は幅があり造影剤を使用しないCTスキャンではプラークの総量を判定することは不可能で、造影剤を使用しても正確な同定は困難です。一方で石灰化はCT値が一定であり正確な値を測定することが可能です。)

冠動脈石灰化と生存率の関係を示したグラフ

Long-Term Prognosis Associated With Coronary Calcification
Journal of the American College of Cardiology Vol. 49, No. 18, 200より

この論文では冠動脈石灰化スコアが最も低いグループの方は5年後の生存率は99.4%とほとんどの方が生存しているのに比べて、石灰化が増加するに従って生存率は低下しもっとも石灰化スコアの高いグループの方は5年後の生存率が81.8%と約5人に1人は亡くなっていることが示されています。

“心臓脂肪”とは?

みなさん内臓脂肪という言葉はよくお聞きになることがあると思います。脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪の大きく2種類があり内臓脂肪が多いと動脈硬化が進みやすいということが報告されています。いわゆるメタボ(メタボリック症候群)はこの内臓脂肪を評価するために腹囲が測定されています。
心臓の周囲にも脂肪があり、近年の研究でその中でも心膜の内側にある“epicardial fat”は“心臓の内蔵脂肪”ともいわれ冠動脈の動脈硬化や心機能の低下に関連することがわかってきています。
当院の心臓ドックでは “epicardial fat”を含めた心臓周囲の脂肪体積を測定し石灰化スコアとあわせて今後の心臓の病気の起こりやすさについて評価を行います。

心臓ドックをお勧めしない方