「足の血管がボコボコと目立つようになってきたけれど、仕事や家事で忙しくて入院なんてできない」 「夕方になると足がパンパンにむくんで重だるい。でも、治療のために何日も休む余裕はない」 「手術と聞くと大掛かりなイメージがあって、痛いのか、どれくらいで元の生活に戻れるのか不安」
毎日、お仕事や家事、育児にと、ご自身のことは後回しにして頑張っていらっしゃる方ほど、このようなお悩みを抱えていらっしゃいます。とくに30代から50代にかけての時期は、ライフスタイルの変化やホルモンバランスの影響などもあり、足の違和感や見た目の変化に気づきやすい年代です。「なんとかしたいけれど、まとまったお休みが取れない」という切実な声を、日々多くの患者様からお聞きします。
「手術=長期の入院が必要」と思われるかもしれませんが、どうかご安心ください。近年、下肢静脈瘤の治療技術は大きく進歩しており、現在では多くの場合、お体への負担が少ない「日帰りでの治療」が可能になっています。
この記事では、現役の医師の視点から、お忙しくてお休みが取れない方に向けて、日帰り治療の実際や、今すぐご自宅でできる対処法、そして病院へ行くべき受診の目安までをわかりやすく解説いたします。ご自身のライフスタイルを崩さずに足の不調を改善するヒントとして、ぜひ最後までリラックスしてお読みくださいね。
目次
足のだるさや血管の浮きが気になり始めたとき、まずは今の辛さを少しでも和らげることが大切です。しかし、良かれと思ってやっているケアが、実は症状を悪化させてしまうこともあります。ここでは、今すぐ実践していただきたいことと、避けるべきNG行動をお伝えします。
| 足を心臓より高くして休む | 横になるときは、足元にクッションや折りたたんだ毛布などを置き、足先が心臓よりも10〜15cmほど高くなるようにしましょう。重力の働きで、足に滞っていた血液が心臓に戻りやすくなり、重だるさがすっと和らぎます。 |
|---|---|
| こまめな足首を動かす運動 | デスクワークや立ち仕事の合間に、足首をゆっくり回したり、かかとの上げ下げを行ったりして、ふくらはぎの筋肉を意識的に動かしましょう。 |
| 自己流の強いマッサージ | ボコボコと浮き出た血管を無理に押し込もうとしたり、強い力でギュウギュウと揉みほぐしたりするのは大変危険です。もろくなっている血管を傷つけ、内出血や炎症を起こす可能性があります。優しくさすり上げる程度にとどめてください。 |
|---|---|
| 長時間の「立ちっぱなし」 「座りっぱなし」 |
ふくらはぎの筋肉が動かない状態が長く続くと、血液を上に押し上げるポンプ機能が働かず、血液が足に溜まりやすくなります。1時間に1回は少し歩き回るなど、同じ姿勢を避ける工夫が必要です。 |
| 体を強く締め付ける衣服の着用 | きついガードルや細身すぎるズボンなどは、足の付け根(そけい部)や膝裏を圧迫し、血液の戻りを妨げてしまいます。 |
足の血液は、重力に逆らって下から上へ(心臓へ)と戻っていかなければなりません。その際、血液が逆流して下に落ちてしまわないように、足の静脈の内側には「逆流防止弁」という一方通行のドアのようなものがついています。
下肢静脈瘤は、この「静脈の弁」が何らかの理由で壊れてしまい、血液が正しく心臓に戻らずに足に溜まってしまうことで起こります。血液が溜まって圧力が高まることで、血管が太く伸びて蛇行し、皮膚の表面にボコボコと浮き出てくるのです。
生活習慣(立ち仕事・座り仕事)
美容師さん、調理師さん、販売員さんなどの長時間の立ち仕事や、一日中パソコンに向かうデスクワークの方は、足の筋肉を使う機会が少ないため、血液が滞りやすくなります。
妊娠・出産
妊娠中はホルモンの影響で血管が柔らかくなるうえ、大きくなった子宮が骨盤内の太い静脈を圧迫するため、足の血液が戻りにくくなり、非常に発症しやすくなります。
加齢
年齢を重ねるにつれて、血管の弾力性が失われ、静脈の弁も弱まりやすくなります。
遺伝的要因
ご家族に下肢静脈瘤の方がいる場合、体質を受け継いで発症しやすい傾向があると言われています。
一度壊れてしまった静脈の弁は、自然に元通りに治ることはありません。しかし、適切なセルフケアを日常生活に取り入れることで、症状の進行を緩やかにし、日々の辛い「だるさ」や「むくみ」を和らげることは十分に可能です。
ふくらはぎは「第2の心臓」と呼ばれています。筋肉が収縮することで、ポンプのように血液を上へと押し上げます。
かかと上げ運動(カーフレイズ)
椅子や壁に軽く手を添えて立ち、両足のかかとをゆっくりと限界まで上げ、ゆっくりと下ろします。これを1日20〜30回程度、無理のない範囲で行いましょう。歯磨きや家事の合間の「ながら運動」としてもおすすめです。
足を段階的に圧迫し、血液が下に溜まるのを防ぐアイテムです。履いている間は足が軽く感じられ、進行予防に役立ちます。ただし、ご自身の足のサイズや症状に合った適切な圧迫圧のものを選ぶことが大切ですので、できれば医療機関でアドバイスを受けることをお勧めします。
こまめな水分補給
体内の水分が不足すると血液がドロドロになり、血流が悪化します。1日1.5〜2リットルを目安に、お茶や水をこまめに飲みましょう。
塩分を控える
塩分の摂りすぎは、体に水分を溜め込みやすくし、むくみを悪化させます。お味噌汁の汁を残す、減塩調味料を使うなどの工夫を心がけてください。
下肢静脈瘤は基本的に良性の疾患であり、急速に命に関わるようなものではありません。「足のだるさはあるけれど、病院に行くほどなのだろうか」と迷われる方も多いでしょう。見た目やだるさが全く気にならなければ、すぐに治療が必要というわけではありません。
しかし、以下のような症状がみられる場合は、静脈のうっ血が進行しているサインです。「仕事が休めないから」と自己判断で放置せず、一度専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
皮膚に変化が現れたとき(要注意)
足首の周りの皮膚が黒ずんできた(色素沈着)、湿疹ができて治らない、皮膚が硬くなってきた、あるいは皮膚に穴が開いてしまった(潰瘍)などの場合は、症状がかなり進行しているサインです。
睡眠に支障が出るほどの症状があるとき
夜中に何度も足がつる(こむら返り)、足がだるくて重くて寝付けない状態が週に数回続く場合は、治療によって睡眠の質や生活の質(QOL)を大きく改善できる可能性があります。
急激な腫れと強い痛みがあるとき
下肢静脈瘤はゆっくりと進行する病気ですが、「ある日突然、片方の足だけがパンパンに腫れ上がり、強い痛みがある」という場合は、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)など、別の急を要する疾患の可能性もあります。この場合は速やかに医療機関を受診してください。
「受診したらすぐに入院や手術を勧められるのでは」と不安に思い、受診をためらってしまうお気持ちも分かります。ここでは、病院でどのような検査や治療が行われるのかをお伝えします。
下肢静脈瘤を専門に診ているのは「血管外科(心臓血管外科)」や、専門の「静脈瘤外来」などです。 現在の主流は「超音波(エコー)検査」です。ゼリーを塗った機械を足に当てるだけで、静脈の太さや血液の逆流の有無をモニターで詳しく確認できます。痛みも放射線被ばくもなく、とても安全な検査です。
検査の結果、治療が必要となった場合、現在は多くのケースで「日帰り治療」が可能です。医療技術の進歩により、体への負担が少ない治療法が主流となっているためです。
血管内焼灼術(レーザー・高周波)
逆流している太い静脈の中に非常に細い管(カテーテル)を入れ、内側から熱を加えて血管を塞ぐ治療です。お体への負担が少なく、現在最も広く行われている日帰り治療の一つです。
血管内塞栓術(医療用接着剤)
医療用の接着剤(グルー)を血管内に注入し、逆流を止める新しい治療法です。熱を使わないため、術後の痛みが少なく、全ての症例に適しているわけではありませんが、お仕事への復帰がよりスムーズになる特徴があります。
硬化療法
細かい静脈瘤に対して、血管を固めるお薬(硬化剤)を注射して血管を塞ぐ治療です。注射のみで行うため、数分から十数分で終了します。
圧迫療法(保存的治療)
医療用弾性ストッキングを着用し、症状の緩和と進行防止を図ります。手術を希望されない場合や、妊娠中の方などに提案されます。
ほとんどの場合で日帰り治療が可能ですが、患者様の血管の状態やご持病、症状の重症度によっては、数日間の入院を伴う治療(ストリッピング手術など)が適していると判断されるケースもあります。ご自身の状態にとってどの治療が最も適切かは、担当の医師としっかりと相談しながら決めていくことができます。過度な心配はなさらずに、まずはご相談ください。
足のだるさや血管の浮きは、毎日の生活の中で徐々にストレスになっていくものです。「休めないから仕方ない」「忙しいから後回し」とご自身を納得させてしまっている方もいらっしゃいますが、今はお仕事や家事への影響を最小限に抑えながら、足の辛さを取り除く方法がたくさんあります。
私たちは、患者様が抱える不安や「休めない」というご事情に寄り添い、少しでも快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをしたいと考えています。足の不調にお悩みの方は、決してご自身の症状を自己判断で放置せず、辛いときは迷わず当院にご相談ください。丁寧な診察と分かりやすい説明で、あなたにとって最善の解決策を一緒に見つけていきましょう。
ご自身の足の症状について、日帰り治療のスケジュールや費用など、
さらに詳しく知りたいことはございますか?
もしよろしければ、どのような疑問やご不安があるか、私にお聞かせいただけませんか?
記事監修

センター長今井 崇裕
専門学会の運営や教育にも関わり、医療技術の向上と次世代育成に取り組んでいます。
国際的な活動を通して、世界標準の最新治療を提供しています。