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大腸粘膜の細胞から発生します。発生の経路は、<1>良性のポリープ(腺腫)ががんになる。<2>正常粘膜が発がん刺激を受けて直接がんが発生する。の2つです。
大腸ポリープは、腸壁から発生して管腔内に突出する組織のことです。約80%が直腸とS状結腸に発生します。腫瘍性の腺腫、非腫瘍性の過形成性ポリープ、過誤腫、炎症性ポリープなどに分類されます。がんになるのは腺腫のみで、その他のポリープはほとんどがん化しません。
大腸にできるポリープの多くが腫瘍性で、そのうち10〜20%ががん化します。大腸以外の臓器については、場所によって異なります。
大腸は、全長約2mの消化管で、右下腹部の盲腸から始まり、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S時結腸、直腸と続きます。大腸がんの発生部位は、直腸が最も多く約50%、次いでS状結腸、上行結腸、横行結腸、盲腸、下行結腸の順。直腸とS字結腸に全体の70%以上が発生しています。近年は、S状結腸が増加しています。
早期大腸がんでは、ほとんど症状がありません。進行すると、潰瘍からの出血(血便)、腸管内腔を閉鎖することによる便秘・下痢や腸閉塞、大きくなってしこり(腫瘤)となる、などの症状がでます。血便は、痔と思い込んで受診が遅れる場合がありますので注意してください。
便潜血反応、直腸指診、肛門鏡、注腸造影検査、大腸内視鏡検査、画像診断(PET、CT、MRI、超音波検査など)があります。
便の中に混じった血液を検出します。陽性であれば、大腸内視鏡検査や注腸造影検査などで病気の有無を調べます。食事制限なしで簡単に受けられるので、40歳を越えたあたりから受けられるといいでしょう。
肛門から直腸内に指を挿入し、直腸内の腫瘍(ポリープやがん)を調べます。直腸がんの多くがこの検査で見つかります。
下剤により大腸の中を空にして、肛門からX線に写る液体(バリウムなど)を流し込み、大腸の壁を写します。がんの位置や大きさ、周囲の臓器との位置関係を調べます。
下剤により大腸の中を空にして、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を観察します。ポリープやがんを直接調べることができます。がんの疑いのある病変から細胞を採取したり、ポリープや早期がんを切除することもできます。
近年、進歩の目覚ましい検査法です。最近ではPET検査が注目されていて、CT、MRI、超音波検査では転移・再発部位が発見できない場合にPET検査で発見されることがあります。
全大腸内視鏡検査を1〜2年に一度受ける必要があるとされています。現在、大腸がん集団検診としては、便潜血反応検査とS状結腸ファイバースコピーの2つの方法があります。
大腸がんは欧米で多い病気でしたが、日本でも増加傾向にあります。日本人の食生活の欧米化(高脂肪食)によるといわれています。
赤身肉の摂取量の多い人、高脂肪食の人にリスクが高いことが認められています。これは、動物性蛋白の加熱により生成される発がん物質などによると推定されています。またアルコールや加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージ)が大腸がんのリスクを上げることが示されています。
大腸がんを予防するためには、赤身肉や脂質の摂取量を少なくし、野菜をたくさん摂るようにしましょう。食物繊維は、発がん物質を便と一緒に排泄する働きを持っていますので、大腸がんを予防するためには重要な栄養素です。定期的に運動することも重要です。
過体重と肥満で結腸がんリスクが高くなります。また大腸がんの発生頻度は、地域、国によって大きな差があります。一般的に肉や乳製品の高消費国では発生頻度が高くなります。しかし高繊維食を多く食べる習慣のある地域は、肉類摂取が多くても大腸がんの発生頻度は低いことから、高繊維食が大腸がんの発生の抑制に働いているともいわれています。
大腸がんの罹患率、死亡率ともに男性のほうが女性の約2倍。結腸がんより直腸がんのほうがより男女差が大きくなります。
大腸がんの罹患率は50歳代あたりから増加しはじめ、高齢になるほど高くなります。
遺伝により発生するがんもあります。「遺伝性非ポリポーシス性大腸がん」は、遺伝子の異常を修復する遺伝子(ミスマッチ修復遺伝子)の異常により発生します。○50歳より若年での発症○右側結腸に多い○子宮体がんなどの多臓器がんが併存することがある、などが特徴です。家族にこの傾向がある人は、早めに大腸の精密検査が必要です。「家族性大腸腺腫症」は、大腸に無数の腺腫ができる病気です。大腸がんを発生する可能性が高く、40歳代までに癌が発生します。
がんの生存率は、がんと診断され治療を受けた人が一般には5年後(乳がんや甲状腺がんでは10年後を目安)にどれだけ生存しているかで示されます。大腸がんは、早期発見であれば、生存率は80%以上です。しかし、同じ発生部位でも進行度によって生存率は異なります。